斎藤茂吉の蛙作品60首

斎藤茂吉 著による蛙作品を収集しています。
斎藤茂吉は、処女歌集『赤光』から遺稿歌集『つきかげ』まで、全18歌集、1万4千余首を詠んでいるそうです。

作者:斎藤茂吉(Wikipedia)

斎藤 茂吉(さいとう もきち、1882年(明治15年)5月14日 - 1953年(昭和28年)2月25日)は、日本の歌人、精神科医。
現在の山形県上山市で養蚕業も兼営する小地主の三男として生まれた。
大正から昭和前期にかけて活動した歌誌『アララギ』の中心人物。

第1歌集『改選 赤光』より(Wikipedia)

宵あさくひとり籠ればうらがなし雨蛙あまがへるひとつかいかいと鳴くも (12折に觸れて 明治四十二年)

ゆふ原の草かげ水にいのちいくるかへるはあはれ啼きたるかなや (4うめの雨 明治四十四年)

狂う院きやうゐんに寝てをれば夜はるし我があぢかくに蟾蜍ひきは啼きたり (7折々の歌 大正元年)

死に近き母の添寝そひねのしんしんと遠田とほだのかはづてんきこゆる (7死にたまふ母 其の二 大正二年)

第2歌集『あらたま』より(Wikipedia)

ことなくていまれかかる二月きさらぎゆふべはぬるしひきいでにけり (6折々の歌 大正五年)

あまがへるきこそいづれりとほる五月さつき小野をぬあをきなかより (8雨蛙 大正五年)

かいかいと五月さつき青野あをのきいづる昼蛙ひるがへるこそあはれなりしか (8雨蛙 大正五年)

五月野さつきぬくさのなみだちしづまりて光照ひかりてりしがあまがへるく (8雨蛙 大正五年)

五月ごぐわつてれる草野くさのにうらがなし青蛙あをがへるひとつきいでにけり (8雨蛙 大正五年)

さつきくさのひかりにかへるこころがなしくそらにひびけり (8雨蛙 大正五年)

あをがへるひかりのなかになくこゑのひびきとほりて草野くさのかなしき (8雨蛙 大正五年)

あをあをと五月ごぐわつ真日まひりかへる草野くさのたまゆら蛙音かへるねにいづ (8雨蛙 大正五年)

五月野さつきぬ浅茅あさぢをてらすのひかりひとこそえねあをがへるく (9五月野 大正五年)

きずりにくとふものか五月野さつきぬあをがへるこそかなしかりけれ (9五月野 大正五年)

さびしさにえるといはばたはやすしいのちみじかしあをがへるのこゑ (9五月野 大正五年)

ひるにこもりてける青蛙あをがへるほがらにとほるこゑのさびしさ (9五月野 大正五年)

あをがへる日光につくわうのふるひるにほがらかにけばましてかなしき (9五月野 大正五年)

くやしさにひとなげくときあをさあまがへるこそきやみにけれ (9五月野 大正五年)

真日まひすみてあまづたふとき五月野さつきぬうごきてあをしかへるにいづ (9五月野 大正五年)

いのちあるもののかなしき真昼間まひるま五月さつきくさ雨蛙あまがへるく (9五月野 大正五年)

『あらたま』には、おたまじゃくしだけを詠んだ「蝌蚪」の小節もあります

斎藤茂吉 (著), 水垣久 (編集)

第3歌集『つゆじも』より

ゆふぐれて浦上村うらかみむらをわが来ればかはづ鳴くなり谷に満ちつつ (大正七年漫吟 長崎著任後折にふれたる)

長崎のしづかなるみ寺に我が来しひきが鳴けるかなそといけにて (大正九年五月四日 大光寺)

閨中けいちゅう秘語ひごを心たひらかに聞くごとし町の夜なかにかはづ鳴きたり (大正十年 帰京)

斎藤茂吉 (著), 水垣久 (編集)

第4歌集『遠遊』より

見るかぎり青野ゆたかぶ起伏おきふせば水の中にてひきがへる鳴く (維也納歌稿 其一 五月二十八日)

窓外に蛙のきこゆるは湖水こすゐに近く走るなるべし (伊太利亜の旅 六月二十日)

斎藤茂吉 (著), 水垣久 (編集)
第5歌集『遍歴』は蛙作品なし。

第6歌集『ともしび』より

かぎろひの春山はるやまごえの道のべに赤がへるひとつかくろひにけれ (摺針越抄 大正十四年)

青淵に蛙ひとつがいづこゆかぽたりと落ちてしづごころなし (木曽鞍馬渓 大正十四年)

むらがれるかはづのこゑす夜ふけて狂院きやうゐんにねむらざる人は居りつつ (雨 昭和二年)

うちわたす麦のはたけのむかうよりかはづのこゑはひびきて聞こゆ (雨 昭和二年)

郊外の病院に来てよるふけぬたゐのかはづのこゑ減りにけり (C病棟 昭和三年)

斎藤茂吉 (著), 水垣久 (編集)

第7歌集『たかはら』より

わがねむる家の近くに水足みづたりて山のかはづは夜もすがら鳴く (野沢温泉即事 昭和五年)

南谷におもかげのこる池の水ときを過ぎたる蛙のこゑす (羽黒 昭和五年七月二十四日)

斎藤茂吉 (著), 水垣久 (編集)
第8歌集『連山』は蛙作品なし。

第9歌集『石泉』より

伊豆の海に近くつづきし山中やまなかかはづきこゆる夏になりたり (熱海小吟 昭和六年)

しほのおときこゆる山の小峡をかひにてかはづのこゑはわれにまぢかに (熱海小吟 昭和六年)

斎藤茂吉 (著), 水垣久 (編集)

第10歌集『白桃』より

わがねむまくらにちかくもすがらかはづくなり春ふけむとす (厳島 昭和八年)

こよい一夜ひとよ友とはなれてみづに鳴くかはづのこゑを聞けばさびしも (厳島 昭和八年)

斎藤茂吉 (著), 水垣久 (編集)
第11歌集『暁紅』、蛙作品なし。

第12歌集『寒雲』より

山のたをひとつ越え来て下谷しただにに蛙のこゑす水ぬるまむぞ (選歌行 昭和十三年)

現身うつせみのわれが聞きつつたのしかり数多あまたかへるとほりて鳴きぬ (御柱行 昭和十三年)

窓したの山がはに鳴く河鹿かじからをうつつかとおもひいなかとおもふ (布野 昭和十四年)

夜をこめて布野ふののはざまに鳴くかはづ暁がたはまれにし鳴くも (布野 昭和十四年)

湧きいでてたまれる水のこもりひき蝌蚪かへるごしやうやすけし (歌碑行 昭和十四年)

やうやくに秋寂あきさびむとすとおもほゆる此処ここ木立こだち雨蛙あまがへる鳴く (續山荘日記 昭和十四年)

斎藤茂吉 (著), 水垣久 (編集)

第13歌集『のぼり路』より

よもすがらひき鳴く聞きて眠りしが朝あけてよりひきの卵見つ (加世田・伊作 昭和十四年)

斎藤茂吉 (著), 水垣久 (編集)

第14歌集『霜』より

おもほえず此処ここにありける小峡をかひよりかはづのこゑすともに鳴きつつ (上ノ山小吟 昭和十七年)

青蛙高野槇かうやまきより鳴きにけり蟋蟀よりもとほるこゑにて (午後 昭和十七年)

斎藤茂吉 (著), 水垣久 (編集)

第15歌集『小園』より

むらぎもの悲しきまでにうちひびきかはづ鳴きたつかひのうへの空 (峡田の蛙 昭和十八年)

雨がへる朝木立あさこだちより鳴くこゑす疾風はやちはいまだ来むといはぬに (十八夜 昭和十八年)

赤がへるひとつ跳ねをりこのゆふべ降りむ雨をよろこぶらしも (強羅漫吟 昭和十九年)

この山の中に田あれやほがらほがら鳴けるかはづのこゑをし聞けば (疎開漫吟(一) 昭和二十年)

斎藤茂吉 (著), 水垣久 (編集)

第16歌集『白き山』より

もろごゑに鳴ける蛙を夜もすがら聞きつつやまひの癒えむ日近し (陸奥 昭和二十一年)

ここにして心しづかになりにけり松山の中に蛙が鳴きて (松山 昭和二十一年)

さびしくも雪ふるまへの山に鳴くかへるに射すや入日のひかり (寒土 昭和二十一年)

いたきまでかがやく春の日光にかへるがひとついきづきてゐる (昼と夜 昭和二十二年)

冬眠とうみんより醒めしかへる残雪ざんせつのうへにのぼりてからだひらぶ (渡土獨吟 昭和二十二年)

穴いでしかへるが雪に反射する春の光を呑みつつゐたり (渡土獨吟 昭和二十二年)

河鹿かじか鳴くおぼろけ川の水上みなかみにわが居るときに日はかたぶきぬ (胡桃の花 昭和二十二年)

小国川宮城みやぎざかひゆ流れきて川瀬川瀬に河鹿鳴かしむ (猿羽根峠 昭和二十二年五月二十九日)

城山をくだり来りて川の瀬にあまたの河鹿かじか聞けば楽しも (横手 昭和二十二年六月十四日)

いへいでて河鹿かじかの聲をききたりしおぼろけ川にも今ぞ別るる (峡間田 昭和二十二年 茂吉送別歌会)

斎藤茂吉 (著), 水垣久 (編集)

第17歌集『つきかげ』より

わが庭に鳴けるかへるあいすれど肉眼にくがんをもてそのかへる見ず (幸福 昭和二十四年)

斎藤茂吉 (著), 水垣久 (編集)
第18歌集『万軍』より、蛙作品なし。

 

参考文献

秋葉四郎 (著, 編集) 飯塚書店 (2018/4/27)
北 杜夫 (著) 岩波書店 (2001/1/16) 北杜夫は、斎藤茂吉の次男

関連場所

斎藤茂吉記念館

住所 :山形県上山市北町弁天1421
電話 :023-672-7227
休館日:毎週水曜日(祝日は翌日)、その他営業カレンダーによる
関連URL:公益財団法人 斎藤茂吉記念館

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