今回ご紹介するのはこちら。

『問題解決力があがる自治体職員のための法的思考の身につけ方』
著:中村健人
発行:第一法規株式会社 (2022/10/6)
あらすじ
住民や庁内から実際にあった相談事例をもとに、法律や条例を使いこなすために必要な法的思考を身につけ、行政、民事、刑事の3つの視点を理解することで早く正確に問題を解決する力を養える、自治体職員必携の指南書。
カエルなポイント
ということで、なぜこの本を読んだのか、というと、
1、表紙がカエルだった
2、サブタイトルが「課長、ウシガエルを薬殺したいという住民の方からお電話です!」だった
からです。
事例
X市の住民Aさんから、
自分の田んぼにいるウシガエルがうるさいくて眠れないので、
田んぼに毒を流して薬殺したいのだが構わないだろうか
との問い合わせがありました。この事例に含まれる法的問題とX市の対応について検討してみてください。
本書によると、「住民からウシガエルを薬殺したいと言われた」場合、
まず行政、民事、刑事の視点を持つことが大事だそうで、
行政的観点から以下の法令(以下名称略式)を確認し、
・動物愛護管理法(なんと両生類は愛護法には含まれない!)
・外来生物法(ウシガエルは特定外来生物なので防除の対象)
・毒劇法
Aさんに対しては、特定毒物以外の、毒物によるウシガエルの薬殺は可能、といった回答が考えられるそうです。
次に、民事的観点から、
Aさんのウシガエル薬殺にともなって、周辺トラブルに発展しないかを助言する必要があるといっています。
そして、最後は刑事的観点から、
Aさんの流した毒物により、他人の生命身体に害を与える可能性について確認する必要があるそうです。
このような事例をもとに検討すべき法律と対応をまとめた一冊です。
カエルに関しては、この部分にしか出てこず、法律の説明、活用本なので、
カエル本としては、こういう本にもカエル出ていたよ、という報告になるのですが、
ここで、X市のAさん、ならびに自治体の欠点を指摘してみたいと思います。
1、Aさんは、田んぼに農薬ではなく毒薬を流したいとしていますが、
はたして、その田んぼの作物を食べない、あるいは、毒薬を流した以降、
収獲するつもりなのでしょうか?
2、ウシガエルは、水の中から陸地に上がって移動できる、という点を
誰も指摘しないのでしょうか?
水から上がれない魚類、または、ウシガエルのオタマジャクシを
せん滅させるなら効果がありそうですが、鳴き声がうるさいという苦情なので、
生体を駆除するには、毒を瞬時に田んぼ全体に行き渡せない限り、
生体ウシガエルの薬殺は難しいと思われます。
3、毒薬の放流にともなって、ウシガエルが他の地域へ移動し、トラブルに発展することにも
言及すべきと思われます。
4、そしてこれを自治体に強く言いたいのですが、ウシガエルがその場所にいるということは、
ウシガエルよりも生態系が弱い生きものが他にいるということなので、生物多様性において、
ウシガエル以外の生き物も殺害してしまう可能性のある薬殺は控えるべき、
という助言をして欲しいと思います。
ということで、生物関連の法令はまだまだ改良、多角的視点が求められるのではないか、という感想でした。